システムから見た基礎年金番号の照合問題 | Technolog.jp - ICTウェブマガジン

システムから見た基礎年金番号の照合問題

最近、メディアで以前ほど報道されなくなってしまった年金問題ですが、一体、その後どうなっているのでしょうか。昨年、舛添大臣は「2007年内の解決を断行する!」と明言しましたが、結局はその難易度を把握し撤回。ガッカリした国民も多いと思います。基礎年金番号を照合するといってもそれは簡単なことではありません。それではシステムの観点から見た場合どのくらい難易度が高いのか、今回はそれについて書きたいと思います。

まず、ご自身の年金手帳を開いていただくと分かりますが、基本情報としては、基礎年金番号、氏名、生年月日、性別、交付年月日があります。当然、これ以外にも社会保険庁で管理している情報はいくつかあると思いますが、年金の振り込みを行うと、その明細情報(振込情報)は、基礎年金番号と紐付けられシステムで管理されているはずです。

システムは高速な処理を可能としますが、結局は人間が「こうしなさい!」と命令したことだけを行います。したがって、人間が数字や文字の入力ミスを行うとそのまま処理されてしまうのです。通常は、同じ基礎年金番号が2個以上登録されないように自動チェック機能を働かせたり、金額のケタが少ないと警告を出したりするのですが、旧年金システムでは、そういったエラーチェック機能がしっかりしていなかったのでしょう。

様々な不正も重なり、5000万件もの照合できない情報が発生してしまいました。

しかし、宙に浮いた明細情報も基礎年金番号以外の情報で紐付けることができます。例えば、「氏名 + 生年月日」をキーに紐付けを行えばある程度は絞られてくるはずです。このように照合の基礎となる情報がある程度しっかりしていれば、自動照合システム(専門的にはETLと呼んだりします。)により比較的短期間で作業は完了します。舛添大臣はこの部分だけを捉えて楽観視していたのではないでしょうか。

実際の問題は、その照合元情報にあったのです。過去に入力した職員がしっかりとしたチェックも行わず、間違った氏名や生年月日を入力する。これによって照合先をなくした情報は手入力で紐付けをする必要が出てくるのですが、基礎年金番号も違う、氏名も違うといった場合、確実な照合方法はありません。テレビで「本人からの自己申告により該当情報と照合し、信憑性を判断した上で承認する」という回答をした担当者がいましたが、これでは成りすましの可能性も出てきます。残念な話しですが、5000万件すべてを正しく照合するというのは不可能に近いでしょう。しかもそれを税金で対応するわけですから社会保険庁のミスを国民が痛み分けするわけです。

以前、話題になった国民一人一人に対する社会保障番号付与の件ですが、これは今後のこういった問題の発生を抑えるのに非常に有効な手段だと思います。欧米では昔から採用していますが、基本情報を一元化し、高い精度を維持することで大きなメリットも生まれてくるはずです。過去のリカバリーも必要ですが、国として将来の投資も考えていただければより良い社会環境ができていくかもしれません。

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